菅首相は歴史的好機を活かせ!ーこのままでは「なっちゃった首相」で終わってしまう

 吉田、岸、佐藤、池田、田中、中曽根、小泉、安倍の各内閣は、良くも悪くも意欲的でした。戦後の独立、日米安保、沖縄返還、所得倍増論、日本列島改造論、国鉄・NTTの民営化、小泉改革、アベノミックス等々、記憶に残る仕事をした首相は確かにいたのです。共通するのは、首相としてやるべき理念・理想を持ち、その準備があったところではないでしょうか。その実現のために有力なライバルを蹴落としてでも首相になりたいというギラギラとした根性を持って自ら首相の座を手繰り寄せたことも共通しています。そして首相在任期間も長かった人が多い印象です。

 短命ながらも理想に邁進した首相もいました。竹下、福田、宮澤の各氏などです。その一方で、短命、かつ、首相になって実現したい理想があったのかと疑いたくなる人たちも多くいました。首相として準備がなく偶々、派閥の力学・政権交代や繋ぎ役として無難なため首相になった人、言わば「なっちゃった首相」を戴いた時期の国民は不幸でした。

宇野、鈴木、海部、森、小渕、菅(かん)、羽田、野田、麻生、福田ジュニアの各氏は、その「なっちゃった首相」でした。  現首相も選出される過程は、「なっちゃった」首相に属します。

「栴檀は双葉より芳し」と言います。理念理想を持ってそれを実現するんだという矜持を持った人は、就任直後から違います。「首相になったら先ず何から着手するのか」心の準備ができているからです。
 成りたくてなった人は、その理念に沿った人事・組閣をやり、国民へ自らの理念を語りかけ、その難易度ではなく、国家国民のために自ら必要と思う政策を断固そして順序立てて実現していくものです。菅首相の人事、最初の外遊先、記者会見の受答えを見ている限り、誰かの準備したものをこなしているだけで、首相としての理念理想が見えてきません。
 逆に、日本学術会議の人事問題、携帯電話の料金引き下げ、ハンコの廃止、Gotoイートなど些末なことばかりが目につきます。

 選出過程はどうあれ、上級国民ではなく二世首相でもない、田中角栄以来の庶民宰相である菅さんには、実は、期待しています。是非立派な仕事をして頂きたいと願っています。
 今からでも遅くないので、次の選挙までに、ブレーンとして国家最高の叡知集め、そして戦略性、実行力のある真に優秀なスタッフによる政策を立案し、国民にぶつけて頂きたい。ヒントは財政支出にあります。アベノミックスは金融政策に偏っていました。しかしそれすらやってこなかったため、アベノミックスによって、わが国は「失われた30年」から辛うじて脱出することができましたが、最早、金融政策の一本足打法の限界が見えています。
 バブル以降は、財政均衡論者の妄信に誑かされ、折角の円シニョリッジを有効活用できず、中国にGDP第2位の座を奪われ、世界経済に占める地位と影響力の急激な低下を招きました。それでなくても需要が足らない低迷経済であったものが、コロナで需要の低迷は極めて深刻な事態となっています。しかし幸運にも、わが国には、財政赤字の余裕(円のシニョリッジ)があるのです。財政均衡論者の赤字亡国論に惑わされてはいけません。いまこそ、コロナのピンチをチャンスに変えて、外交・安全そして防災、医療、学術研究の各インフラ作りに財政を使い、国家国民の長期にわたる繁栄と発展の礎となる異彩を放つ政策を打ち出して頂きたい。
 官房長官として官僚をどうコントロールするかという霞が関界隈の狭い統治から脱皮し、思う存分働いて頂きたい。

 「円シニョリッジ(円が急落するという事態まで財政を拡大できる)が手つかずに残っている」という歴史上、又とないチャンスに首相となった幸運を国家国民のために活かして頂きたい。しかも各国共に財政赤字を拡大していますので、円シニョリッジの天井はさらに高くなっています。しかし逆に、ここで財政赤字論者の心配性に引きずられて政策を誤ると円高が昂進し、外需まで低迷して「失われた30年」を超える大不況となる可能性があります、つまりチャンスが大ピンチとなってしまいます。

 このまま些末なことに囚われ、財務省等の妄信に誑かされたのでは、「なっちゃった首相」として単なる繋ぎ役で終わってしまうだけに留まらず、折角の歴史的国家発展の好機が大ピンチに変わりかねないのです。ご本人と国家国民にとって誠に残念なことになってしまうと心配しています。