必要もないのに、思いもよらず、成年被後見人とされないための予防法と対策について考えます。
おさらいですが、「成年後見関係事件の概況」(最高裁事務総局家庭局)によりますと、審判を申立てられるとほぼ100%被後見人にされてしまう現実があります。65歳以上の方は、とにかく申立てられないように、普段から申立てができる人たちとの関係を良好にしておく必要があります。
先ず、自分を被後見人にするように申立できる人たちを全員知ることから始めましょう。
その人たちは、民法第7条に列挙されています。本人もできますが、それはいいとして、配偶者、四親等内の親族、検察官そして老人福祉法に基づく市町村長です。すでに他の後見類型にある方々には、保佐人、保佐監督人、未成年後見人、未成年後見監督人、補助人、補助監督人も申立できますが、ここでは、おきます。
この中で特に注意を要するのは、配偶者です。配偶者の申立は一般的に言ってやはり、説得力があります。65歳を過ぎると、二回目の退職を迎え、家に居ることが多くなりますが、決して現役の時のように威張ってはいけません。まして、夫婦喧嘩や家を空けるなどは間違ってもしてはなりません。とにかく夫婦円満のために堪え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ覚悟で臨んでください。次に四親等内の親族です。これらの方々も大変危険です。そもそも自分の四親等内の親族を全部言える人は少ないと思います。紙に書き出して確認しておきましょう。直系卑属は玄孫まで、直系尊属は高曾祖父母まで、配偶者の曾祖父母、曾孫(連れ子の孫)、兄弟、甥、姪、叔父叔母、自分の兄弟とその配偶者、甥姪の子、大叔父大叔母、いとこまでです。会ったこともない人がいるかもしれません。身寄りが少なく、そのような遠縁の親戚しかいないときは、面倒はみたくないが、推定相続人であるなら遺産は欲しいという親族もいる可能性があり、俄然、危険は現実のものとなるでしょう。少なくとも恨みを買うような言動は控えましょう。久しぶりで法事などであったら、手土産をあげたり、ご馳走するなど、無駄を承知で義理をかけておくのも一つかもしれません。検察官が登場する例は、ほとんどありません。しかし既報の通り、進境著しい市町村長は、要警戒です。市町村長の個人的な知り合いでない限り、市町村長は誰かの情報に基づいて判断することになります。
ここで登場するのが、ご近所さん(町内会)、民生委員、介護関係者、取引先、かつての職場の部下や同僚、同好会の仲間などです。このような人たちから不評を買っているなら、できるだけ早く関係改善に勤しんでください。これらのアカの他人が、あらぬ話を市町村に持ち込み、身内からも同調者が出たりするとフレームアップされる可能性は大です。
もう一つ重要な人物がいます。かかりつけの医師です。申立にはかかりつけの医師の診断書が添付されます。また先々で家裁から鑑定を依頼されることもあります。ここが、頑張ってくれれば、助かる可能性がありますし、のちのち戦う起点にもなりえます。
失礼ながら、やぶ医者でも、生意気でも65歳を過ぎれば、決してかかりつけの医師の不興を買ってはいけません。まして喧嘩するなどは以ての外です。「そこまで、卑屈に生きるくらいなら、成年被後見人になった方がましだ」などと短気を出してはいけません。立派な専門職後見人も沢山いらっしゃいますが、「変なの」に当たると一生付きまとわれ、あなたを苦しめ続けます。何倍も大変な目にあいますから、我慢です。
それでも、申立てられ、後見開始の審判が下ったら、あきらめずに、2週間以内に即時抗告を原裁判所に出して高等裁判所で争いましょう。高裁では、後見類型の当不当を争うことになります。見知らぬ後見人が付くのは不満であるということは抗告の理由にはなりません。これにより成年被後見人ではなく、被保佐人或いは被補助人というように、より軽い別の後見類型に変更してもらうことができる可能性があります。例えば補助相当となれば、補助開始の審判は本人の同意が必要ですから、同意しなければ、無罪放免となる道が残されています。即時抗告という事態になれば、費用を惜しまず有能な弁護士を頼むようにしましょう。ただし抗告が却下される事例も多いことは認識しておいて頂く必要があります。
以上は、必要もないのに、思いもよらず、成年被後見人とされないための予防法と対策ですので、必要な場合は、申立を受け入れるしかありません。少々誇張したうえ、冗談っぽく申し上げて誠に不謹慎で失礼しましたが、それなりの真実がありますのでご参考にして下さると幸いです。
でも、やっぱり自由に生きたいという方も多いと思います。
大丈夫です、安心してください。諦めてはいけません。自由に生き、卑屈にもならずに成年後見人を予防できる極めて有効な方法が二つあります。
一つはいわゆる家族信託契約を使う方法、二つ目は移行型任意後見契約を利用する方法です。
次回はこれらが、なぜ予防策となるのかについて報告いたします。