IMFが2020年の世界経済の見通しを発表しました。-4.9%と1930年代以来の厳しい見通しとなりました。
CNNは「IMFは新型コロナウイルスの世界的な流行が、世界の活動に前代未聞の落ち込みをもたらしたと指摘。世界の労働市場が破滅的な状態なほか、自宅外の活動は停滞しており、企業は投資を削減し、消費者支出は大きく減少している。」と伝えています。
こうした中、米国や日本等の平均株価は年初から3月中旬にかけて歴史的暴落をした後、V字回復し既に8割方戻し、活況です。
一体何が起きているのでしょうか?
経済のファンダメンタルズや企業の業績(リアルの世界)では、株価を判断できない相場を小職は「バーチャル相場」と呼んでいますが、現実離れした狂い咲きの相場と割り切れない思いがあります。
①最早、ファンダメンタルズでは株価は語れない時代となったのでしょうか?
②それとも、例によって「株価の先見性」が次の新しい繁栄を予見しているのでしょうか?
証券マンとして40年の経験から、誤解を恐れず申し上げますと、どうやら②の可能性が高いのではないかと考えております。
単なる金融相場だという人もいますが、それだけで、この環境で巨大なリスクオンが選択されているとは到底思えません。
来年には32年振りに日経平均が、新高値を付ける日が来るのではないかと期待しています。
1971年のドルショック(米国の金兌換停止に伴う世界経済の危機)以来のパラダイムシフトが起きようとしている可能性があります。1971年8月15日に米国はニクソン大統領によってドルと金の兌換を停止しました。
マル経の貨幣論は資本主義においては金は唯一の貨幣とされ、金本位制が正しい姿でした。金という信頼できる貨幣に交換できるからこそ紙幣が流通するのであり、それでなくては単なる紙を誰も信頼するはずがない。貨幣における金崇拝の歴史が終わった瞬間でした。これで大インフレがやってきて世界経済は大変なことになるという心配で世界の株価は急落しました。日経ダウは8月だけで10%暴落したのでした。
しかしその後は、何か分からないけど株価は上昇を続け、日経ダウはその後3年で3倍に大化けしました。
それまで米国は、世界に供給したドルの金との交換のため豊富にあった金準備が枯渇する事態に直面していました。
金兌換の維持こそ世界経済の秩序を守ると信じ、唯一の兌換通貨ドルは戦後、世界経済の健全な発展のために役割を果たしてきたはずでした。それが維持できなくなり、金兌換を停止するという驚天動地の事態に株価は大きく下がったのです。
ところが、9月に入り株価は上昇に上昇を重ね、僅か1年余りでNYダウは4割上昇し、その後現在の25000ドルまで実に40倍となりました。米国は金崇拝を捨てたことにより、シニョリッジを手に入れたのです。つまり、ドルという紙でドルの購買力を手に入れた(通貨発行益)わけです。これにより米国は、金の流出を気にせず、ドルという成長通貨を世界に供給し経済の成長の天井を取り払ったことになります。それまでは、金の流出を抑えるため景気の引き締めを行う必要があり、好不況を繰り返していたのです。シニョリッジを手に入れて、金流出を気にせず成長通貨を供給できることにより、リセッションはあるものの恐慌は最早、昔のことになりました。
金崇拝からの離脱で、資本主義経済は成長の天井を取り払うことができたのです。
資本主義経済はいま再び、コロナショックを契機として、プライマリーバランスという呪縛から解放されようとしています。
これにより、医療インフラ、防災インフラ、環境インフラ、学術研究インフラ、貧困対策などを財政赤字の天井を引き上げて取り組むことが見えてきたのです。
背に腹は代えられない形で、コロナ経済対策を打つことで、新しいパラダイムが見えてきた。
5兆円の増収を得るために、大変なエネルギーを使って消費税を上げた人たちが、コロナのお陰で、コロナ対策200兆円をぶち上げることができました。その中身はともかくとして、コロナで天井をぶち抜いた。
そしてMMT(現代貨幣論)は、コロナのお陰で、偶然、陽の目をみることになったと言えるかもしれません。
しかし忘れてはならないのは、2つのことです。
①それでも限界はあること。②どこの国でもできるわけではないこと。
そして、単なるバラマキではなくインフラ投資による需要創出であるべきこと。
「良い財政赤字と悪い財政赤字」
日米中国、ドイツなど欧州の一部そして産油国の一部には、外貨獲得力がありますから、シニョリッジがあります。
それぞれ程度の差がありますが、そうした国が機関車となって世界経済を引っ張るそんな姿が、株式市場には見えているのではないでしょうか。「新日本列島改造論」この題名の本を引っ提げて登場する政治家が、天下を取ることになりそうに思っています。