官民挙げての成年後見制度利用促進運動が始まった!

平成28年に成年後見制度の利用の促進に関する法律(以下「促進法」という。)が施行され、平成29年3月24日にそれに基づく成年後見制度利用促進基本計画(以下、「基本計画」という。)が閣議決定されました。そして今年4月1日に本件の担当が厚生労働省となることが決まり、法務省、総務省、家裁、地方公共団体、民間団体(専門職3団体など)も含め、官民挙げての成年後見制度利用促進の取り組みが始まりました。
促進法も基本計画も成年後見制度の利用が低調な現状についての反省からスタートしています。
促進法第1条において「重要な手段であるにもかかわらず十分に利用されていない」、同第3条第1項において「成年後見制度の利用の促進は、(中略)基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び(中略)財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと」
基本計画においても、3.総合的かつ計画的に講ずべき施策(a)利用者に寄り添った運用 ○ 成年後見制度においては、後見人による財産管理の側面のみを 重視するのではなく認知症高齢者や障害者の意思をできるだけ丁 寧にくみ取ってその生活を守り権利を擁護していく意思決定支援・ 身上保護の側面も重視し、利用者がメリットを実感できる制度・運 用とすることを基本とする。
これらのことは、今日ただいま実現していないことの自白です。自白ですが、これってどこかで聞いた気がすると思われた方も多いのではないでしょうか。
デジャブではありません。成年後見制度発足のために2000年4月に施行された民法の一部改正により設けられた条文(民法858条)「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。そのものです。そこには身上監護が先に来て、財産管理事務は後です。さらに加えて、成年被後見人の意思の尊重も当初から明文化されていたのです。
制度発足の理念として謳われているものが18年も経って、利用が低調なことの主たる原因として並んで出ていることに愕然としてしまいます。何を実現しようと18年間やってきたのか、この時の経過が残念です。今回の利用促進の取り組みがスタートしてる中でも、現場では、この自白の通りの財産管理優先、成年被後見人の意思の不尊重が引き続き行われており、理念は顧みられている形跡はありません。基本計画にある工程表では改善策は基本法が施行されて5年後の33年度(2021年度)完成見込みとあります。被後見人にとって18年はあまりに長かったし、これからの3年は更に長い。成年被後見人の多くが高齢者であることを考えると一日も早い改善が望まれます。反省するのに18年もかかったことを考えるとあと3年待てば、本当に改善されるのか、またしても理念はお題目としてのみ意識される事項となってしまうのではないかと心配です。
次回以降、基本計画における心配の種を順次検証し具体的提案をして参ります。
次回は先ず、基本法と基本計画において、利用促進の大きな前提となっている「後見人が不足しているから普及しない」という認識を検証します。