出口の向こうへ(4)財政規律はどこへ行った?

「200兆円のコロナ対策は世界最大」と安倍首相は胸を張った。ポピュリズムここに極まれり!

「赤字国債と建設国債はどう違うのですか?」二十数年前、豊田紡織の応接室で豊田信吉郎会長のご下問を受けました。
「どちらも国債であることは変わりはないのですが、使用目的が道路やダムなど後世に残るものを作るための国債を建設国債といい、単に財政の赤字を埋めるための国債を赤字国債と呼んでいます。」豊田会長は殊のほかこの応答をお気に召した様子で、それ以降大変可愛がっていただいた思い出があります。
思い出はともあれ、コロナ対策費はほとんどが現在の国民の消費に回るお金です。後世に残る財産はほとんどありません。そのつけは、子や孫いやもっと先まで負担が続きます。それでなくても政府純債務残高は837兆円(政府総債務は1325兆円)を超えています。
どう返済するのか、どう財政を再建するのか?
先の消費税引き上げによる税収増は5.6兆円でした。あれだけのエネルギーを要して実現した増税でしたが、200兆円のコロナ対策の前では、焼け石に水となり、蒸発してしまった感じです。あの増税も当初の触れ込みは、「4兆円は国債の返済に充て、残りは社会保障費など高齢者支援に使う」予定でしたが、途中から子育て世代の支援、幼児・高校無償化などへ回ることになりました。
前回述べましたように、この大盤振る舞いのつけは、「増税かインフレ」でしか払えません。しかしこれだけ巨額になると増税では追い付かないことは既に明白です。

これから起きるインフレは、オイルショックの狂乱物価とも、バブル期の資産インフレとも違うものになります。
オイルショックは、原油の急騰により諸物価が値上がりしたものです、またバブル期の資産インフレは、超金融緩和により、お金は土地と株に集中して向かい、高級品、貴金属の類に波及したもので庶民の生活には限定的なものでした。
しかしこれから起きるインフレは石油は上がらず、企業収益は低迷、倒産、失業が同時並行する生活必需品インフレとなるものと思われます。マスクや消毒液、トイレットペーパーで起きていることが、生活必需品全般に広がり、庶民である労働者や特に年金・金利生活者(高齢者)を直撃するものとなると想定しています。高齢者が純貯蓄の9割を保有していることは既に述べました。それを盗りに来るインフレです。
与野党ともに、蓮池を巡り桜を見て賭けマージャンに興じた代償は、極めて大きいものがあります。
これから始まる国難に比べれば、どれも些末なことでした。
些末なことに明け暮れていたところにブラックエレファント(米ミット・ロムニー上院議員は最近コロナをこう呼んでいます。)の襲撃を受け、みんなが浮足立って、冷静な判断ができていません。
最早、正常な判断は安倍内閣にも野党にも期待できない状態です。

戦争で失った被害を政府は弁償したわけではありません。ましてコロナ被害は政府の引き起こした戦争ではないのです。
なぜここまで、大衆迎合的なバラマキ政治が与野党誰の指摘もなく通っていくのでしょうか?

コロナ対策で重要なものは、一律給付、休業補償や家賃補助、学費補助などではありません。
感染症対策として、明らかになった病床の不足や医療体制の充実にこそお金が向けられるべきで、補償に終始していたのでは、2次、3次の、感染拡大には備えられません。お金もいくらあっても足りません。
休業を強いられている方々やその他大変な方々には、既にあるセイフティネットで対応し、自助努力のエネルギーも大切にするべきです。
甘いお金には、毒があります。またそのつけは、必ず回ってくるのです。
それに頼らず、立ち向かう経済でなくては、みんな共倒れとなるでしょう。
政治家の自己保身のための大盤振る舞いに、歩調を合わせていては、後が大変なだけです。

特に、高齢者はこれからひどい目に遭うことになります。自衛手段を考えていきましょう。