ソロモンの時代3-貯えに見合ったパーソン・センタード・ケアへの備え-

 認知症になったら私のお金はどうなるの?
 高齢者全員が関心を持つ問題ですが、特にソロモンの皆さんにとってお金は死活的に重要です。おそらく家族等に頼れないソロモンの皆さまは、老後の備えをしてこられた方が多いと思いまが、ここではその老後の貯えの多寡や有無を問題にしているのではなく、折角準備した老後の貯えを意思能力の喪失によって自分のために使えなくなることを問題にしています。
 身寄りのない認知症有病者は、オレオレ詐欺だけでなく過大なセールスやお金を無心する人などにとって格好の標的となります。 従って、財産を守るためには、成年後見人に財産の管理を委ねる流れとなります。成年後見人のミッションは、被後見人の財産を守ることですから、守ってはくれます。しかし長谷川和夫先生(認知症研究の第一人者で自らも認知症であることを公表した)の言う「暮らしの障害から認知症有病者を知恵と工夫で助成するパーソン・センタード・ケア」 などに、成年後見人はお金は使ってくれません。
 つまりソロモンが「パーソン・センタード・ケア」 を実現するには、やはり意思通りに使えるお金が頼りとなります。
 もちろん特養や安価な施設においても 「パーソン・センタード・ケア」の努力がされていないことはないと思いますが、コストの問題から設備も人員も制限されます。苦労して貯めた貯えに見合うケアを受けられないとすれば、積年の努力が報われません。しかし成年後見人からすれば、被後見人の衣食住が足りればよいのです、不正がない限り家庭裁判所もそれで文句は言いません。また成年後見人の報酬は被後見人の財産から支払われますから、被後見人の求める必要最低限を超える支出とは競合関係に立ちます。
 成年後見人の管理下では、必要最低限の施設に押し込められて、友人知人からの面会は遮断される事例が多数あります。その理由は、「他人が、被後見人に余計なこと(騙したり、無心したりすること)をすることを防止するため」です。もちろん悪い人ばかりが面会に来るわけではありませんが、成年後見人には、その判別をする意思も能力も時間もありませんので、いきおいすべてを遮断するよう施設と話し合っていることが多いのです。コロナで誰も面会に来ない日々は、認知症を悪化させることが報道されましたが、それ以上に厳格な遮断が行われますので、より悪化を促進することは想像に難くありません。
 このように成年後見制度は、「必要最低限の一律管理」を行う制度であって、長谷川先生の言う「パーソン・センタード・ケア」 とは対極にあります。
 ソロモンの皆さんが老後の貯えに見合う「パーソン・センタード・ケア」を受けることができるためには、ご本人がお元気な間に、いざとなった時に、その資産を活用して適切な「パーソン・センタード・ケア」 受けられるような仕組みを作っておくことが必要なのです。 
 その仕組みとは、「家族信託と成年後見制度の併用」であると小職は考えております。
「ソロモンに家族はいないよ」という声が聞こえてきそうですが、そこも含めて次回にご説明いたします。