「認知症になったら、私のお金はどうなるの?」その1(Nothing about us without us !)

Nothing about us without us !
「我々のことを我々抜きで勝手に決めるな!」。これは障害者権利条約(2006年12月国連において採択)が掲げたスローガンです。我が国では、認知症等によって、意思能力をなくした場合、なにもしなければ預金の払い戻しや自宅の売却は難しくなります。そこで期待されるのが成年後見制度ですが、発足直後から、国際世論との乖離を抱え続けています。
 下記の年表にみられるように、障害者権利条約の批准(2014年1月批准書寄託)は、外務大臣の署名から6年以上の歳月を要しました。
障害者にとってみれば「勝手に決めるな!」とは至極当たり前の話ですが、一足先の2000年に導入された我が国の成年後見制度は、逆に「勝手に決める」制度として発足したため、障害者権利条約との理念や基本構造の修正に長い年月が必要となったのです。
 そして今なお両者の間には、構造上、大きな乖離が残っているため、日々悲劇を産み、成年後見制度の普及は遅々として進んでいません。(認知症有病者は2020年には約600万人に達すると推定されますが、後見人等は21万人程度に止まっています。)一向に無くならないオレオレ詐欺やアポ電強盗の背景には、高齢者が自宅に多額の現金を置いているということがあります。成年後見制度への信頼が持てない現状では、いつなんどき認知症を発症して預金を凍結されるかもしれないという恐怖心からの自衛策と推定されますが、犯罪の標的と化している現状を強く危惧しております。
チャックの掛け違いは、途中をいくら整合させても、最初に戻って掛け合わせなければ永遠に掛け違ったままです。そして下の方からほどけてきて破綻してしまいます。
それでも、政府や関係諸団体は、利用促進法をつくり、官民挙げて現行成年後見制度の利用促進を強力に推し進めています。
 見せかけだけでなく、中身を「勝手の決める」制度から「利用者の尊厳を守りと権利を尊重する」制度へ改めない限り「笛吹けど雀踊らず」となるのは必然です。

             記
「成年後見制度と国連による障害者権利条約の簡易年表」

2000年4月1日   成年後見制度施行
2001年12月   メキシコの提案による「障害者の権利及び尊厳を
          保護・促進するための包括的総合的な国際条約(外務省訳)」の策定が採択
2006年12月13日  国連総会において障害者権利条約採択
2007年 9月28日      高村正彦外務大臣(当時)が署名
2008年 5月 3日       障害者権利条約発効
2013年 3月14日     東京地裁違憲判決(被後見人の参政権剥奪は違憲)
2013年 6月30日      成年被後見人の参政権回復(公職選挙法一部改正法施行)
2013年12月 4日      参議院本会議が、障害者基本法や障害者差別解消法の成立に伴い、
                                  国内の法律が障害者権利条約の求める水準に達したとして、同条約の批准を承認
2014年 1月20日       批准書を寄託