1919年から14年余りの間、第1次世界大戦で敗北したドイツに興った民主的な形態を標榜した共和政国家があった。ワイマール共和国では、敗戦による多額の賠償金とハイパーインフレに苦しみながらも、当時、世界で最も民主的と言われたワイマール憲法を制定し、帝政を廃し直接選挙による大統領制、男女20歳以上の普通選挙による国会を開設、世界初の労働者の団結権を認め、厚い福祉政策を謳った共和政が行われた。憲法制定後も種々の混乱があったが、1920年代には、失業率も低下し黄金の20年代と言われる繁栄を謳歌した。
当初は、社会民主党中心に中央党、ドイツ民主党のワイマール連合が安定的多数を占め、憲法制定、国会開設、対外交渉などを主導した。その後左右両サイドに多くの政党が乱立し、多党化の中での集合離散による短命政権が続いた。安定した多数政党がなく、政治が混迷する中、世界恐慌の影響による経済の混乱も有り、ヒトラー率いるナチスの台頭を招いた。
ヒトラーは実権を握ると緊急大統領令を発動し、ワイマール憲法の基本的人権を停止するとともに、実質的にナチ党以外の政党の活動を禁止した。そして憲法に違背する法律を制定する権限を含む強大な立法権を掌握した。これにより、世界に誇るべきワイマール憲法は事実上効力を失いワイマール共和国は消失したのである。
いま世界は、戦後一貫した「アメリカによる平和」が崩れ去り、国連の無機能化が進み、武力による現状変更が公然と行われ始めている。アメリカによる経済帝国主義はむしろ同盟国を標的とし、近隣の中国、ロシア、北朝鮮の経済・軍事の策動はその活動を活発化させている。 そうした混乱の中で我が国の政治は、自民党が急速に弱体化し、ポピュリズム(外国人排斥、減税、社会保障費削減など力点は様々な大衆主義)政党が複数勢力を拡大する多党化に突入し、国会の首相選出を前にして混乱が続いている。ワイマールの成功と失敗に学ぶべきときにあると思う。