「最高裁事務総局家庭局」あまり馴染みのないお役所ですが、後見開始審判の総元締めとのいえる組織です。其処が、成年後見制度開始以来、毎年「後見関係事件の概況」という報告書を出しています。
それによりますと、発足当初は69%だった認容率が、18年間一貫して上昇を続け、ここ数年は95%程度となっています。申立て途中で本人が亡くなるケースもありますので、申立て通り後見開始となる率はほぼ100%と言えます。
また、その審判終了までの期間は、当初は半分以上が4か月以上かかっていたものが、現在では70%以上が2か月以内に審判されるようになっています。
審判期間がドンドン短くなり、そしてほとんど認められるというのは、一見良いことのように思われますが、チョッと待てよと思う必要があります。と申しますのは、審判されるのは、一人の人間の保護という名の権利剥奪であるからです。成年被後見人になりますと、銀行預金が下せない、不動産の売買ができない、訴訟ができない、契約ができない、遺言も書けない、弁護士、医師など国家資格が剥奪される、取締役の欠格事由となるなど身の回りの買い物以外何も一人ではできなくなります。
そういう目で見ると、そんなに早く、しかも絶対OKではなく、逆にもっと慎重に審判してほしいと思うのは小職だけでしょうか?
制度発足18年で、後見開始審判は大きく変わっていきました。まるで、オートメーションの自動車工場のように、確実に、しかも迅速に成年被後見人は量産されるようになっています。もっとも、急ぐ事情があるケースは仕方ありませんが、「後見関係事件の概況」の推移をみると、まるで各家裁、各裁判長が「より多くより早く」を競い合っているようにも見えます。
実は、この数字の推移には、恐ろしい2つの事実が同時に進行しています。
長くなりますので、次回詳しくお話申し上げます。