トランプ関税に対して各国が個別に交渉するのは、彼我の力の差が大きく有利な交渉は望めない。相手の機嫌を損ねないようにする上目遣いの交渉では、対等な交渉ができるわけがない。トランプ政権は各個撃破で有利なディールを目論んでいることは明らかである。各国もそれぞれ他より少しでも有利なディールを目指すがあまり、まんまとトランプ政権の策略に陥りつつあるようにみえる。特に我が国においては、カナダや欧州のような表立った関税批判は控え、「日本は交渉の先頭に居る」などというトランプ政権の煽てに乗り、真っ先に交渉に飛び込んで行った。しかし早くも第2回交渉途上で、新たに自動車部品の追加関税を伝達され、煮え湯を飲まされ、抜け駆け的相対的に有利な交渉結果は夢と消え、首相にも交渉当事者たちにも笑顔が消えた。「ゆっくり急ぐ」などという言葉の遊びは、米国の侮りをを招くだけである。相手は、日本は選挙までに決着したがっていると早くも足元を見られてしまった。こうなると、選挙前にいらざる妥協を重ねて、多少の関税率の引き下げで決着すれば、国の実利は損なわれるだけでなく、トランプに対日ディールは大勝利などと宣伝されれば、世界中の失笑を受けることとなり、国威は失墜する。当然、参議院選挙は自公の大負けとなる。石破政権はディール決着後、トランプ政権の凱歌とともに、選挙前に瓦解する。
「引くも地獄、進むも地獄」まさに進退窮まる国難であるが、打開する道は、一つある。
それは、各国が抜け駆け的交渉を避け、「同盟国、準同盟国が一致団結して、トランプ政権と対峙すること」である。
石破首相は、早速米国を除くG7メンバーとインド、韓国、オーストラリアの首脳に電話して、トランプ関税に対処する国際会議を招集して、共同声明を出すことである。そして、各国は個別交渉は取り止め、トランプ政権を含め、関税に関する同盟国会議を問題解決の唯一の場として開催することである。
いくら各国が関税の無益さを米国に訴えても、相手は聞く耳を持たない。正論は一致してみんなで主張して初めて相手に届くのである。そして米国の望む国内産業の振興のための対米投資と、赤字削減の具体的プロセスを議論すれば、関税などという劇薬を振り回す愚が米国内にも理解されるものと思われる。このような国際的議論の枠組みができれば、交渉力すらなく、米国の言うがままを強いられる其の他の弱小国も拠り所ができ、声を上げることができる。
圧倒的な力を有する米国相手に欧州や日本と言えども個別交渉では、勝てるわけがないし、それぞれが他より少しでも有利に妥結したいという抜け駆け根性で交渉すると相手の思うつぼに嵌まるだけである。
ここは、労使交渉さながらに、団結して臨む他ないのではないか。主要同盟国に呼びかけ、それを纏め上げることができれば、石破氏の名声は歴史に残り、国難も乗り越えられる。会議の趣旨は「対米投資の拡大と米国の赤字削減のため」とすれば、トランプの目を気にすることもない。
あせることはない、参議院選挙前の決着など逆の結果しか生まない。株価下落や支持率低下で逆にトランプこそ焦っている。石破首相は、腰を据え、同盟国の団結に力を尽くしてほしい。
トランプ関税には、G6+印韓豪の同盟国連合で対処すべし